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民法改正が施行されましたね②(時効制度の改正Part2)

2020.04.02

こんにちは,東京支店の弁護士の宮島祐太郎at新橋です。コロナウイルスに負けずにブログを更新いたします。

残念ながらコロナのニュースで影を潜めてしまいましたが,昨日(令和2年4月1日)から,改正民法が施行されました(パチパチパチ)(本当は昨日の夜,記事をアップしたかったです…)。

というわけで,ブログ更新を怠るわけにはいかない!と思い立ち,前回の時効制度の改正Part1に引き続き,本日はPart2の記事を執筆したいと思います。

1 改正法のポイント(part2では,ⅳ及びⅴを解説します!)

  ⅰ 職業別短期消滅時効・商事消滅時効の廃止
  ⅱ 主観的起算点から5年の短期消滅時効の導入
  ⅲ 生命・身体の侵害による損害賠償請求権の特則(債務不履行及び不法行為のいずれも短期5年,長期20年に
  ⅳ 時効の中断・停止から完成猶予・更新への再構成
  ⅴ 協議による時効の完成猶予の新設

 


2 上記ポイントⅳ(時効の中断・停止から完成猶予・更新への再構成)

 ⑴ 時効の中断・停止とは

  ア 前回の記事で書いた消滅時効は,法で定められた一定の期間,持っている権利を行使しないと,その権利が消滅してしまい,相手に請求できなくなる制度です。もっとも,改正前の民法は,この時効の成立を阻止する制度として,時効の「中断」と「停止」という制度を設けていました。

  イ 時効の「中断」とは,簡単にいうと,改正前の民法で定められていた中断事由(裁判上の請求・差押え・承認等)が時効の完成前に生じた場合には,その時効期間を一旦リセットするものです。
イメージとしては,(同世代の方々にはどうか伝わってほしい…)ボンバーマンが10年後に爆発する(≒時効が完成する)爆弾を持っていて,時効が「チッチッチッ…」と進んでいき,「あと1か月後に爆発する。どうしよう!」という場面を想像してください。
そして,そのときに上記の時効の中断事由が生じると,その時点から,そのボンバーマンの持っている爆弾は,再び10年後に爆発する爆弾に変わり,再び時効が「チッチッチッ…」と進んでいきます。
なので,権利者としては更に10年間,権利行使をできる期間が延びるということです。
具体例が分かりづらかったら恐縮です(>_<)

  ウ 時効の「停止」とは,改正前の民法で定められていた停止事由が生じた場合にはその時効期間がリセットせずに,その時点から,停止事由が終了するまでの間は,時効期間が進行しないというものです。
イメージとしては,再び,上記の10年後に爆発する爆弾を持っているボンバーマンを想像してください。
上記の「中断」の場合とは異なり,「あと1か月後に爆発する。どうしよう!」という場面で,停止事由が生じた場合には,その時点から,停止事由が終了するまでの間は時効期間が進行しないため,そのボンバーマンの持っている爆弾は,あと1か月後に爆発する爆弾のままということになります。
そして,「中断」とは異なり,時効がリセットされていないため,上記爆弾は,停止事由が終了したときから1か月後に爆発する(≒時効が完成する)こととなります。

 ⑵ 改正前の民法の時効の「中断」と「停止」の問題点

  ア 改正前の民法の時効の「中断」について

改正前の民法の時効の「中断」は,ⅰ時効が完成すべき時が到来しても時効の完成が猶予されるという「完成猶予」の効果と,ⅱ時効期間の経過が無意味なものとなり,新たに零から時効期間を進行させる「更新」の効果という二つの効果を持っていました。
一例として,令和2年4月1日から時効が進んでいた権利について,令和3年4月1日に訴訟提起(中断事由である裁判上の「請求」)を行い,令和4年4月1日に判決が確定した場合を想定します。
この場合,令和2年4月1日から進行していた時効は,令和3年4月1日の訴訟提起で,その進行がストップします(上記ⅰの「完成猶予」の効果ですね)。そして,判決の確定した令和4年4月1日以降は,再度時効が進行します。このときに,令和4年4月1日までストップしていた時効の進行は一度リセットされ,再度,新たな時効が進行します(上記ⅱの「更新」の効果ですね)。
以上のとおり,時効の「中断」は,異なる効果を同一の用語で表現するものであり,概念としてとても不明確で,理解が難しいものでした。

  イ 改正前の民法の時効の「停止」について

改正前の民法の時効の「停止」は,その効果は,停止事由の発生によって時効の完成が猶予されることにありましたが(上記ⅰ参照),「停止」という表現では,意味内容が理解しにくいと言われていました。

 ⑶ 改正後の時効の「完成猶予」及び「更新」について

  ア 時効の「中断」について

上記⑵アで書きましたように,改正前の民法の時効の「中断」には,ⅰ時効の「完成猶予」とⅱ「更新」という効果がありましたので,その効果の内容を端的に表現する規定となりました。
先ほどの,具体例で申し上げると,令和3年4月1日に訴訟提起をすると,その時点でまずは時効の完成が猶予されます。そして,その事由の終了の時,すなわち,令和4年4月1日に判決が確定した時において,時効は更新され,時効期間は新たにその進行を始めることとなります

  イ 時効の「停止」について

上記⑵イで書きましたように,改正前の民法の時効の「停止」には,ⅰ時効の完成が猶予される効果がありましたので,ⅰ「完成猶予」という概念で,その効果をより理解しやすい規定となっています。

 


3 上記ポイントⅴ(協議による時効の完成猶予の新設)


 ⑴ 概要

今回,法改正によって新設された制度である協議による時効の完成猶予とは,当事者間で権利に関する協議を行う旨の書面又は電磁的記録による合意があった場合に時効の完成を猶予させる制度です。

 ⑵ 協議による時効の完成猶予制度が新設された背景

改正前の民法の下においては,当事者が権利をめぐる争いを解決するための協議(交渉)を継続していても,時効の完成が迫ると,完成を阻止するために裁判所を利用する訴訟提起等の措置を取らざるを得ないことが多く,当事者間での柔軟な解決を阻害していると言われていました。
そこで,このような当事者間での協議(交渉)を行っている期間中は,時効が完成しないように手当を講じる必要があるのではないか?ということになり,上記の協議による時効完成猶予の制度が新設される運びとなりました。

 ⑶ 要件

  ア 権利についての協議を行う旨の合意

  イ 上記アの合意が,書面又は電磁的記録(メール等)によってなされていること

 ⑷ 注意点

この新設された協議による時効の完成猶予の制度を利用する場合,上記⑶の要件イで記載のとおり,合意をする当事者間で書面又は電磁的記録によってなされる必要があります。
一例として,権利の存在を争う者(例えば,100万円の金銭支払請求に対して,「そのような債務は存在しない」と反論している者)は,時効の更新事由である債務の「承認」に該当すると思われる合意条項やメールでのやり取り等を,上記100万円の金銭支払請求をしている者との間での協議による時効の完成猶予の制度の合意書面や合意に関する電磁的記録の中で,残さないようにすることが大事です
例えば,上記権利の存在を争う者が,権利者との間での上記の合意に関する電磁的記録(メール等)の中で,「実は一括払いができないので,分割払の協議がしたい」という記録を残してしまった場合,その時点で債務の「承認」があったものと判断され,時効の更新がなされると判断される(すなわち,時効の完成が更に先になるため,権利の存在を争う者が,時効の完成を主張できなくなる)可能性が高いからです。

 

 

今回は,ここまでです。
コロナに負けずに北里綜合法律事務熊本本店・東京支店は平常運転しておりますので,皆様からのお問い合わせをお待ちしております(*^-^*)
記事をお読みいただいている方々もどうかお体に気を付けて,日常生活をお過ごしください!

 

次回もこうご期待ください!

 

弁護士 宮島 祐太郎

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