お役立ち弁護士ブログ blog

養育費算定表、見直しへ!

2019.11.20

 一部報道によると、養育費算定表の見直しについて最高裁が作業を進めており、来月(2019年12月)に新しい養育費算定表を発表をするそうです(「養育費算定表、見直しへ 最高裁が12月に公表」(日本経済新聞2019/11/13)<https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52108460T11C19A1CR0000/>)。

 養育費とは、子どもを監護・教育するために必要な費用です。 一般的にいえば、未成熟子(経済的・社会的に自立していない子。以下では、単に「子ども」と言います。)が自立するまでに要する費用で、生活に必要な経費、教育費、医療費などです。

 子どもに対する養育費の支払義務(扶養義務)は、親の生活に余力がなくても自分と同じ生活を保障するという強い義務(生活保持義務)だとされています。その結果、親はたとえ夫婦として離婚したとしても、子どもに対しては養育費を支払わなければなりません。

 そして、子どものいる夫婦が離婚した場合には、養育費がしばしば問題となります。つまり、“子どもの親権を得られなかった親が、子どもが自立するまでいくら養育費を支払わなければならないか”という問題です。

 もちろん、お互いに支払うべき養育費について話し合って決めた場合には、特に問題になりません。

 しかし、親が離婚について争っている場合や支払うべき養育費の額について争っている場合には、裁判所が調停や裁判などによって、養育費の額を決めることになります。

 この時、裁判所が参考とするのが「養育費算定表」です。以下では、「(旧)養育費算定表」と呼びます。

 

 今まで使われていた「(旧)養育費算定表」は、2003年に作成されたものです(裁判所HP<http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf>)。

 その後、この養育費算定表では養育費が安すぎるとの批判が上がり、日本弁護士連合会(日弁連)が2016年に「養育費・婚姻費用の新しい簡易な算定方式・算定表に関する提言」を公表し、裁判所が作成した養育費算定表よりも養育費の額が高くなる「新算定表」を公表しました(日弁連HP<https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2016/161115_3.html>)。

 しかし、日弁連が「新算定表」を公表したにもかかわらず、裁判実務では、裁判所が作成された「(旧)養育費算定表」が使われ続けてきました。当然、この「(旧)養育費算定表」に基づいて養育費が決められてきたので、親権者となった親(その多くは母親)からは、「養育費が安すぎる!」との不満が上がっていました。

 

 「(旧)養育費算定表」が作成されてから16年。やっと、「(旧)養育費算定表」が見直されようとしています。

 もちろん、「(旧)養育費算定表」よりも養育費が高くなる方向での見直しとなるようですが、具体的にどのような内容になるのかは、現時点では分かりません。

 公表される「(新)養育費算定表」の内容を早く見たいところです。

 

弁護士 古閑 哲哉