2023年4月28日に成立した「フリーランス保護法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)」が、2024年11月1日に施行予定です。今回は、「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」との違いや法律の概要をお伝えします。
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下請法との違い
フリーランス保護法と下請法は、いずれも「業務を受託した事業者が不利益を被らないための法律」である点が共通しています。
ただし、下請法は業務を委託する企業や組織の資本金が一定金額(最低で1000万円)以上の場合に適用となる法律です。フリーランスへの委託事業者は、資本金が1000万に満たないことも多く、フリーランスとの取引においては下請法が適用されず、フリーランスで働く人たちが法律的に守られないケースも出てきてしまうことが問題視されていました。
フリーランス保護法は、資本金の要件に関わらず、フリーランスへの委託事業者に幅広く適用されます。この点が下請法と大きく違うところです。
また、下請法は、独占禁止法の特則として、発注事業者が下請事業者に不当な取引を強いることのないよう定められた法律です。一方、フリーランス保護法は、昨今増加傾向にあるフリーランスで働く人の権利保護のために独立した法律として制定されました。
そのため、取引の適正化に関わることだけでなく、フリーランスの就業環境の整備に関しても条項で定められています。
フリーランス保護法で保護される対象
法人であったとしても、一人で事業を行っている場合はフリーランス保護法の対象となりますが、個人事業主でも従業員を雇用している場合は対象外です。
フリーランス保護法の規制が適用となる委託事業者
フリーランス保護法が適用される委託事業者は
「従業員を雇用している個人事業主」
もしくは
「2名以上の役員がいる、もしくは従業員を雇用している法人」です。
これまで下請法では規制適用外となっていた広範な事業者も適用対象となります。
フリーランス保護法の概要
先ほども述べたように、フリーランス保護法は、フリーランスとの取引の適性化とフリーランスの就業環境の整備を目的に作られた法律です。フリーランスとは、特定の企業や組織に属さず、自身の経験やスキルを活用して収入を得る人のことを指します。デザイナー、ライター、コンサルタント等様々な業種が考えられます。
フリーランス保護法によって、委託事業者(発注者)が守らなければいけないと定められた内容を紹介します。
・書面等での取引条件の明示
フリーランスに業務を委託する際には、以下を速やかに書面にて明示する必要があります。
-業務の内容
-報酬額
-支払期日
-発注事業者・フリーランスの名称
-業務委託をした⽇
-給付を受領・役務提供を受ける日、および場所
-(検査を⾏う場合)検査完了⽇
-(現⾦以外の⽅法で⽀払う場合)報酬の⽀払⽅法に関する必要事項
・報酬支給日の明確化・期日内の支払い
フリーランスに対する報酬は、発注者が検査をするかどうかに関わらず、成果物またはサービスの提供を受けた日から起算して60日以内に、かつできるだけ短い期間内に支払う必要があります。
・発注者の禁止行為
フリーランスとの取引で以下の行為が禁止されます。
・受領拒否 ・報酬の減額 ・返品 ・買いたたき
・購⼊ ・利⽤強制 ・不当な経済上の利益の提供要請
・不当な給付内容の変更・やり直し
・的確な募集情報の表示
広告等にフリーランスの募集を掲載する際、以下の2点を守る必要があります。
・虚偽の表示や誤解を与える表示をしないこと
・正確かつ最新の内容にすること
・育児・介護と業務の両立に対する配慮
業務委託が6か月以上になる場合は、フリーランスが育児や介護と業務を両立できるよう、申し出に応じて必要な配慮(納期の変更やオンライン業務への切替)をしなければいけません。
・ハラスメント対策
ハラスメント対策として、以下のことが求められます。
-ハラスメント禁止の方針の明確化、方針の周知と啓発
-相談や苦情に適切に対応するための体制整備
-ハラスメントが起きた後の迅速かつ適切な対応
・中途解除等の事前予告・理由開示
6か月以上の業務委託を中途解除・更新しないことにする場合、原則として30日前までの予告が必要です。また、請求に応じ理由を開示する必要があります。
弊事務所ではフリーランス保護法への対応に向けての法的な準備・対策に関してもご相談を承っております。ぜひお気軽にご相談ください。
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